揺り椅子のかすかな軋み去年今年  猿田 恭子
  緑濃き砂漠の夢や寒昴   浮谷 栄子 
  指図する姉さん被り餅の音  大倉 操 
  初笑い認知の母に添うまなこ  川辺 智惠子 




  冬の雷睨みを返す鬼瓦   三宅 雅子 
  初篝とどかぬ闇はふかきかな   山岡 ゆう子 
   小鳥くる令和の春にまだ生きる  松本 敏江 
   時差のなき日本列島初日の出  佐藤 勝 




  異国めく暮の電飾ターミナル  熊谷 ひさ子
  初雀おしゃべりしつつ飛ぶつがい  高瀬 益子
  初春や海老蔵の眼の総身射る  坂下 智宣
  明けそめる丹後半島初霞  嶋﨑 うめ乃
  初明り離るるほどにミルク色  村上 美穂

  蕎麦一把ゆでて占う去年今年  廣瀧 久子
  筆削に汚れし句帳喜寿の春  佐野 豊
  柏槙に小さき胎動浮寝鳥  津川 聖子
  三葉の松葉見つけし初詣  中川 千恵子
  小上がりの猫に言いわけ屠蘇の酔い  尾関 香
  思春期の三者面談冬銀河  和田 柊子
  初場所や富士までとどけ勝名乗り   網谷 利一郎 
  冬日さす猫も前足つき出して  佐野 君子 
  梵鐘の余韻をつれて去年今年   野田 健司 
  外っ国の漂着ごみや冬の浜   染田 美喜子 
  福寿草声なく生れ十八才   森田 成子 
  紅梅や初めて酒を呑む娘  前田 利典

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