松 籟 集

 奥の院へそそり立つ磴年迎ふ  今井 紋子
 去年今年海に聳える剣岳  松谷 眞佐子
 冬の灯やブックセンター尊徳像  樋口 進二



風 韻 集
 猫だって触ってみたい初氷  石川 暘子
 白富士を俄かによぎり初鴉  今井 匡子
 薄氷や相合傘に恋ひとつ  瀬山 賤女
 お正月寝癖のつきし眉毛かな  小佐野 祐一
 初日の出金幣受ける眠り顔  藤 美恵子
 新嫁の名の筆順や祝箸  樋口 登代子
 歳時記のカーバー新たに初御空    桝室 杏花  



潮 音 集
 ほろほろと百合根を蒸すや春支度  片山 宣子
 明けの春静かに光る相模湾  石田 加津子
 代替の表札新た初日さす  武尾 てる子
 淑気満つ水音のみの不動尊  稲葉 末江
 老の春流行の服に袖とおす  尾崎 幸子
 同胞や悲しき集い冬野菜  大内田 志津
 初詣綿菓子ほどの願いかな  森内 洋子
 初護摩に命の炎もらいけり    堀毛 美代子  
 俎板は私の打楽器なずな打つ  尾嶋 八栄子
 初鏡また埴輪から始めます  木村 オサム



くすのき集

 黄落やその後はいかにお母さん  吉塚 三津枝
 寒牡丹ああ観世音観世音  横内 ひとみ
 一匹と云えず鯛焼二匹買う  島田 冬生
 恙がなく一年終わるメモ多き   飯田 あき
 風雪や農一筋の母遠き  竹内 満喜子
 雑煮膳家族引き込む稚児の笑み  加藤 健治
 小春日や円空佛の格子窓  中島 道夫
 波し吹く片側町の冬銀河  櫻井 良子
 歳重ね祖父似の眼初鏡      足立 久仁子   

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