玄鳥歳時記より

 風鈴の路地には白い線路かな
                            岡部 榮一
                            
 風鈴の百の音色や南部富士
                            鈴木 あきを

 
嵐去り江戸風鈴の音軽し
                            猿田 潤一
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 晩成といふ語古りたり渋団扇
                            土肥 幸弘
                            
 駅舎から団扇ぽこぽこ出てゆけり
                             伊藤 保子
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 打水や人の気配の暖簾越し
                             浮谷 栄子

 磯野家が住んで居そうな青簾水
                             岡田 克子
                            
 金魚玉試着室より大空へ
                            岡部 榮一

 小上りの深川飯や金魚玉
                            土肥 幸弘

 金魚売り渇いた街をぬらしてく
                            横山 冬都
 浴衣剥がすあお青と山引き寄せて
                            石田  剛

 宿浴衣遊び心を着てしまふ

                            越野 雹子       
 日傘廻す齢にあらねど逢瀬かな
                            土肥 幸弘

 ポンペイの廃墟の中の日傘かな
                            井上 きくを

 江の電の線路を渡る白日傘
                            佐藤 俊子
 扇風機際どき風を送りくる
                            土肥 幸弘

 永久のごとく潜水服と扇風機
                            水田 雅吉子

 天井の扇風機の影シェイクスピア
                            宮川 壽美子
 水中花月に満ち引く枕元
                            土肥 幸弘

 人を好きになりしは二度目水中花
                            竹内 ゆき子
 三輪車乗りつけて買ふ氷菓子
                            土肥 幸弘

 果てしなき距離かも知れず氷店
                            水田 雅吉子

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