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摩耶だより(各集巻頭句) 

令和2年10月号   岡部 榮一 

 モノクロが佳し麻服の佐分利信     安田 循子

 
 戦前、松竹映画で上原謙、佐野周二、佐分利信で三羽烏を結成して看板俳優として活躍した。背が高く二枚目も悪役もこなした俳優である。勿論、戦後も俳優、監督として映画、テレビでも活躍もしている。
 佐分利信が二十~三十才代の戦前のモノクロ映画での活躍が印象深いからである。白い麻服に白いパナマ帽に白靴は二枚目紳士の看板のようなものであったからであろう。作中作者の父の若き時代と重なるからであろう。



 夏空を揺さぶっているトランペット  古村 寛子
                           
  高校の吹奏楽部の銘々の練習風景であろう。音が高くて大きいトランペットなどの練習は校舎の屋上が相応しいように思う。心ゆくまで吹けるであろうし遠慮がいらないからである。まさに夏空を揺さぶる感じがするようである。突き抜けた感じをうまく捉えた句である。
 

 みすずかる信濃は茅花流しかな  俵田 美惠子 
                      
 みすずかるは信濃に係る枕詞である。枕詞のみすずかると信濃には特別な意味的な関連はない。一種の情緒的な色彩を持たせたりリズムを整えたるする役目を担う。句も信濃の茅花流しとの関係に意味的なものはない。あるのはリズムと信濃の国の茅花流しの風だけである。


 潮風や砂に刺さりし松落葉     佐野 豊
                         
 散り松葉である。松は常緑樹で春に松の芯と呼ばれる新芽を伸ばし、やがて少しずつ古い葉を落とす。針葉樹であり葉も細い関係でいつの間にか落ちていることに気づくぐらいである。海岸で少し強い浜風が吹くと松落葉も多くみることができる。潮風に強いこともあり防風林としての植樹も多い。砂に針のように刺さっている落葉もありそうである。


 石段にきりりと葉影夏の昼     谷島 葉子    
        
 きりりとははっきりとしたほどの意味であろう。夏の昼の太陽に黒くはっきりとした葉の影を石段に落としていたとゆうことである。影と言うことであれば八つ手の葉や無花果の葉など大きい葉なのであろう。キリリが石段の段差を思わせて面白い。

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