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摩耶だより(各集巻頭句) 

令和2年3月号   岡部 榮一 

 ドイツパンに残りし歯形暮れの秋   太田 鈴子

 
 ドイツパンの代表と言えば大型のライ麦パンである。好む人もいますがパサパサした印象があり一般的にはあまり好まれていないようである。ドイツはパン大国だそうで年間の消費量もパンの種類も多いそうである。
 さて、子供が齧った歯形が残っているのである。途中で食べるのを止めたのはパンが硬かったと言うよりパサパサした感じが好まれなかったのであろう。晩秋の昼過ぎの感じである。ドイツパンがいかにも実直そうでおかしみを感じさせるようである。



 棚一つ空いて明るき年用意    佐々 紀代
                           
  断捨離が言われて久しい昨今である。終活も早めにと言われているようである。流行り廃りは何時の世にもあるものである。さて、年末の大掃除と整理である。捨てるもの最低限残すものを仕分けしてみれば棚が一つ空いたのである。思い切ることも年用意なのである。
 

 日溜りの呉越同舟冬の鳥    年清 あきを 
                      
 湖のほとりからの景である。勿論、湖面に白鳥や真鴨や鴛鴦などが浮かんでいるのである。冬の渡り鳥は越冬のために北から渡ってくる鳥が多い。何千キロも飛んで行き来してきた鳥の歴史は長い。鳥や動物が移動するのはそれなりの理由があるのである。鳥たちが入り乱れて泳ぐ姿を眺めている老人たちも呉越同舟なのである。


 北斎の隠れ三角冬の富士    萩原 あやの
                         
 北斎と言えば富嶽三十六景である。全四十六図の中でも「凱風快晴」と「神奈川沖浪裏」は特に有名である。富嶽三十六景が評判を呼んだのは浮世絵版画で富士を主題としたこともあるが遠近法などの新しい手法を駆使して描いているところにある。遊び心か計算か三十六景には富士の三角がいたるところに隠されているようである。これを隠れ富士と呼ぶようである。



 島の医師ポインセチアを飾りたる   鈴木 瑩子    
        
 離島の若い医師であろう。クリスマスが近づけばせめて気分だけでも味わいたいのであろう。医学生時代の楽しかった青春が忘れがたいのであろう。勿論淡い恋もである。島の医院の診察室に真っ赤なポインセチアが印象的であり象徴的でもある。


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